猫を抱いて象と泳ぐ

読み終わりました。
美しい静けさに満ちた作品。
以前に観た映画
≪海の上のピアニスト≫を思い出しました。
どちらの主人公も「特定の場所」でしか、
生きられない人物。
ラストも似ています。
≪海の上のピアニスト≫を観た当時は、
そのラストに理解しがたいものを感じたのですが、
この≪海を抱いて猫と泳ぐ≫を読んで、
この終わり方しかないのだと思いました。

「自分の居場所」というのは、誰もが時おり考えるテーマだと思います。
特に思春期の頃は、強く意識するでしょう。
私もそうでしたし、今でもそれを少なからず引きずっています。
自分の居場所はここじゃない気がする。
じゃ、どこだ? と
あてもなく探し続けるのは、つらいことです。
もしかしたら、居場所は「ここ」かもしれないのに。
その点、この物語の主人公、リトル・アリョーヒンは幸せなのかもしれません。
「居場所」は「そこ(チェス盤の下)」にしかないとわかっているのですから。
いや、やっぱり幸せです。
たぐい稀なるチェスの才能を通じて、彼は広い世界、いえ宇宙を感じることが出来るのです。
そして、その才能を決して名声の道具にはせず、
ただチェスを楽しみ、学ぶ、その崇高な姿勢……。
深く感銘を受けました。

チェスを全く知らない私でも胸が高鳴る、
数々の対局の描写。
チェスに詳しい方ならさらに楽しめるでしょう。

ほかにも美しい場面や描写は随所にありますが、私がとても好きなのは、
リトル・アリョーヒンと彼の最良のパートナー、ミイラ(本名は明かされていません。なぜ彼女がミイラと呼ばれるのか、そのいきさつも小川洋子ワールド!)がやりとりする手紙の内容。
わけあって、ふたりは離れ離れになるのですが、
初めて届いたミイラからの手紙に便箋にただ≪e4≫とだけ記されているのです。
チェスの棋譜(どの駒をどこの位置に置くかその軌跡を書いたもの)です。
リトル・アリョーヒンもただ≪c5≫とだけ書いて、返事を出します。
ふたりはそのやりとりでチェスを行い、同時に言葉で交わすよりも深い、
心の交流を行うのです。
なんと美しい!!

チェスの多くの魅力を感じさせ、またその奥深さをも予感させる作品でした。


ところで、先日図書館で借りた
レーモン・クノーの≪文体練習≫を半分ちょっと読んだのですが、
すっ…………ごく、面白いです!!!
予想以上!
かなり笑えます。
本を読んでこんなに笑ったの久し振りっていうくらい、
声を出して笑いました。
読了したら、また感想を書きます。






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